21日に米国労働省が2024年3月雇用統計(事業所調査)の基準改定速報値を公表し、雇用者数は81.8万人下方修正された。
3月時点で雇用者数は前年比+290万人のため月平均+24.2万人であったのが、同+17.4万人程度で、雇用の伸びはより緩やかであったことを示す。
正式な改定値は2025年1月雇用統計で公表される。元データである四半期雇用・賃金調査(QCEW)の動きを踏まえて概ね今回の下方修正自体は織り込まれていたため、FOMCメンバーの雇用環境に対する評価、金融政策の方向性に大きな影響はないだろう。
同日に公表された7月FOMCの議事要旨でも、事業所調査ベースの雇用者数が過大である可能性を一部メンバーが指摘している。議事要旨では、何人かの参加者が企業の価格決定力が衰えつつあることや、価格競争力を維持するための値下げが増えつつあること、また労働市場においても、企業の人手確保がこれまでとの比較で容易になっていることが指摘された。
また、FOMC後のパウエル議長の記者会見でも示唆されていた通り、インフレと雇用の鈍化を踏まえて複数のメンバーが今会合での利下げ開始を支持したことや、重要指標に大きな上振れ等がなければ、多数のメンバーが9月会合から利下げに踏み切る考えであることが記された。また、23日に行われるパウエル議長のジャクソンホール会議での講演(詳細は22日に公表)もこれまで示してきた見解から大きな変更はないだろう。
「雇用と物価のバランスに配慮」しつつ9月からの利下げ開始は示唆しながらも、大幅利下げへの期待から各年限の金利が既に大きく低下している中、金融環境が過度に緩和的になることは回避し、「今後得られる追加的なデータを踏まえて判断する」とこれまでと同様に「データ・ディペンデント」な姿勢を示すと考えられる。FRBが9月以降利下げを開始した場合でも、これまでの蓄積的な雇用増加と大幅な賃金上昇に加えたインフレ鈍化による実質雇用コストの増加、高金利による金融システムへのストレス、グローバルな景気減速による不透明感の高まり等を受けて雇用環境の悪化は今後も継続すると引き続き予想する。
これらの要因の代理変数を用いることで、失業率の今後の悪化を見通すことが可能である。また、現状の失業率悪化を労働力人口によるものであると楽観的に捉える向きもあるものの、労働需要の減退によって雇用の伸びの鈍化が続くことで、リストラの増加を伴わくとも労働市場への新規参入者の失業は増加し、経済全体の消費や設備投資に徐々に下押しの影響を与えていくことが考えられる。そして、それによる総需要の減退がさらなる失業を招くという循環が起こり得る。
失業率=-5.1+0.1労働分配率(4QMA)6期ラグ+0.9金融環境指数(4QMA)+1.0 10y2y金利差(4QMA)+0.2家計貯蓄率+1.1アップダミー+1.2ダウンダミー;R2=0.96 (アップ・ダウンダミー調整前R2 =0.79)
日経平均株価は、名目GDP(兆円)、ネットの国内資金需要(企業貯蓄率+財政収支)、緩和的金融政策ダミーで推計できる。
日本経済は、名目GDPの平均が525兆円、ネットの資金需要が0%で消滅という状態からなかなか抜け出せなかった。
日経平均株価のマクロ・フェアバリューは13000円程度となってしまっていた。アベノミクスによって日本経済は膨らむ力を多少は取り戻し、名目GDPの平均が540兆円程度となり、日経平均株価のマクロ・フェアバリューは20000円程度まで上昇した。
l 新型コロナ後の財政拡大で、ネットの資金需要が回復し、名目GDPが急拡大を始め、4-6月期には610兆円程度となっている。しかし現在、グローバルな景気減速による企業貯蓄率の上昇で、ネットの資金需要はまた消滅してしまっている。
ネットの資金需要が0%で、名目GDPが610兆円程度であることを前提とした日経平均株価のマクロ・フェアバリューは36500円程度となる。ネットの資金需要が回復して―2%となり、名目GDPの成長率が3%程度で625兆円程度まで拡大すれば、日経平均株価のマクロ・フェアバリューは42000円程度となる。
急落前の日経平均株価はそのような良好な状態を織り込んでいたとみられる。日銀の拙速な利上げによって、リフレの力が失われることが意識され、日経平均株価はマクロ・バリュー近辺まで調整したことになる。
日経平均株価は名目GDP(兆円)、ネットの国内資金需要(企業貯蓄率+財政収支、GDP比%、マイナスが強い)、緩和的金融政策ダミー(2012年10-12月期まで0、その後1)で推計できる。これらの変数を使うことで、2000年からの日経平均株価のマクロ・フェアバリュー(四半期ベース)が算出できる。
名目GDPで、経済規模の拡大が株式市場の時価総額の拡大、企業収益(EPS)の拡大につながる動きをとらえる。ネットの資金需要で、企業と政府の合わせた支出する力が、マネーの拡大と家計に所得が回る力となり、日本経済のリフレの力として、PERが上昇する動きをとらえる。
アベノミクスによって、物価安定を0%の物価上昇率とする古い日銀の考え方から、2%の物価安定目標に変化した。物価上昇率の安定水準が上昇する期待が、アベノミクス前後で2000円程度の日経平均株価の押し上げにつながったことを、緩和的金融政策ダミーでとらえる。
日経平均株価=-116,600.4 +246.2 名目GDP (兆円)-1,035.3 ネットの資金需要(%GDP)+2,738.5緩和的金融政策ダミー+3,658.3アップダミー -2,866.8ダウンダミー;R2 =0.98(アップ・ダウンダミー調整前R2 =0.91)
ネットの資金需要が1%拡大すると、日経平均株価を直接的に1000円程度押し上げる。更に、ネットの資金需要の拡大によるリフレの力が、名目GDP成長率を0.3%押し上げる。名目GDPが600兆円とすると、日経平均株価を400円程度、追加的に押し上げることになる。日本経済は、名目GDPの平均が525兆円、ネットの資金需要が0%で消滅という状態からなかなか抜け出せなかった。
日経平均株価のマクロ・フェアバリューは13000円程度となってしまっていた。アベノミクスによって日本経済は膨らむ力を多少は取り戻し、名目GDPの平均が540兆円程度となり、日経平均株価のマクロ・フェアバリューは20000円程度まで上昇した。
新型コロナ後の財政拡大で、ネットの資金需要が回復し、名目GDPが急拡大を始め、4-6月期には610兆円程度となっている。しかし現在、グローバルな景気減速による企業貯蓄率の上昇で、ネットの資金需要はまた消滅してしまっている。
ネットの資金需要が0%で、名目GDPが610兆円程度を前提とした日経平均株価のマクロ・フェアバリューは36500円程度となる。ネットの資金需要が回復して―2%となり、名目GDPの成長率が3%程度で625兆円程度まで拡大すれば、日経平均株価のマクロ・フェアバリューは42000円程度となる。
急落前の日経平均株価はそのような良好な状態を織り込んでいたとみられる。日銀の拙速な利上げによって、リフレの力が失われることが意識され、日経平均株価はマクロ・バリュー近辺まで調整したことになる。