「外国人支援業」をしている方には分かると思いますが、来日したばかりの外国人に日本のルール、生活マナーを理解してもらうのは簡単ではありません。
時に彼らは日本人じゃ考えもしないことをやったりしますので「まさか、そんなことするとは思っていなかった」という経験をしたことは少なくないと思います。
とはいえ、日本人だとしても想定外のことは起こるわけなので前提として、基本的なことを教えることは必要です。日本人なら説明も難しくはないので、深く考えないことが多いのですが外国人が相手だとそうはいかないことが多いので苦労します。
そこで今日は、「外国人相手の日本での生活オリエンテーション」は「何を説明するべきか」をお話します。
目次
- どんな問題が多い?
- 説明した方がいいこと
- 説明の方法
- まとめ
1 どんな問題が多いの?
在留外国人はそもそもどんな問題が起きやすいのでしょうか?経験談として起きた問題の多いものを書いていきます。
- 深夜のパーティ、騒音苦情
- 間違ったゴミ出し
- 駐輪場などの共用施設の利用方法
- 財布を無くす、在留カードを無くす
- 引越しの時の残置物
- 年金、税金の未払い
- 日本語が伝わらず、情報伝達ができない
上記に挙げたリストですが、実際に起きた問題です。ほとんどの方が経験していることだと思います。財布をなくしたり、在留カードをなくしたりするのは個人の不注意ですので仕方がないことですが
そのほかの事は、被害を受けている人がいる問題(騒音によって眠れない、ゴミの異臭が不快、自転車が邪魔)ですので、必ず説明します。
ただ、これらの問題は、実際に問題がおこった時にすぐに発覚することが多いものでもあります。
例えば騒音苦情であれば、現在進行形で起きていることですのですぐに解決に向かうことができますし、財布をなくしたという報告があれば、警察署への届出や、在留カードの紛失届けを出しに行くなどの解決方法を取ることができます。
ですが、厄介な問題というのは「起きていることが発覚しにくい」ものです。
例えば以下のようなものです
- 水道管、排水管のつまり
- 害虫の大量発生
- 水回りのカビが発生
- 水回り木材の腐食
- 床の劣化
これらの問題は、実際に住んでいる時に発覚する事は少ないです。部屋を退去する時に見つかったりするものなので、その時には被害が大きくなっていたりします
一度起きた問題の例をあげると、5階の部屋に住んでいる外国人が洗面台で髪を切ってそのまま流して排水管を詰まらせ、完全に蛇口を閉めずに外出してしまい、水が溢れて1階まで水浸しになったという問題がありました。
以前から髪の毛を洗面台で切って流していたようで、今回それが完全に詰まり問題が起きたという実例です。被害総額は300万を超えました。
2 何を説明するべき?
「そもそもオリエンテーションをしているのだからルールを守ってほしい」という意見もよくわかります。
ですが実際に問題は起きているので、やはり何度も繰り返し説明することが重要なのはいうまでもありませんね。
「特定技能ビザ」で来日する外国人を支援する「登録支援機関」という機関が新しく出て来ました。2019年12月現在で3305件も登録されているようです。本来であれば外国人を雇用する企業が行うべきことだとなっていますが、適宜登録支援機関への依頼も可能となっているようです。
- 事前ガイダンス
- 出入国する際の送迎
- 適切な住居の確保の支援、生活に必要な契約の支援
- 生活オリエンテーションの実施
- 日本語学習の機会の提供
- 相談、苦情への対応
- 日本人との交流促進に係る支援
- 転職支援
- 定期的な面談の実施、行政機関への通報
外国人雇する企業が、生活オリエンテーションを実施する事はわかりますが、実際にどういうことを説明するべきか?というのはわからないと思います。
基本的にこれを説明した方がいいというものを挙げていくと以下のようになります。
- 深夜のパーティ、騒音苦情
- ゴミ出しの方法
- 駐輪場などの共用施設の利用方法
- 財布を紛失した場合の対応方法
- 引越しの時の注意点
- 年金、税金の支払いについて
- 近所の方とのお付き合い
- 水道管、排水管で気をつけること
- 害虫を発生させないための方法
- 水回り使い方、そうじのやり方
オリエンテーションといっても全て網羅して説明できる訳ではありませんので、特に気をつけた方がいいこととして説明することをオススメします。
どれだけ説明をしても「まさか!!」というような事は必ず起きると思います。
・実際に経験した、まさかな出来事
「留学生が、学校の敷地内にある池で飼われている鯉を釣って食べた」
という出来事がありました。
・・・・・・。
言葉になりませんでしたね。その留学生からすると池にいる魚を釣って食べて何が悪い!という感じでした。
その池が学校の敷地内にあって、学校が所有している物(生き物)なので、勝手に釣ってはいけません。という説明があればしていなかったのかも知れません。
このように、日本人では当たり前にある観念というものがありませんので、そのことを理解して支援、サポートをする必要があります。
3 説明の方法
ではオリエンテーションではどのように説明するべきか、また言い回しなどにも注意をしていく必要があります。
日本人は、遠回しの言い方が得意ですのではっきりと言わないことが多いです。契約書などでも「善良なる管理者の注意義務」があるとかなんとか言われることが多いですが、外国人からすると
「善良なる管理者の注意義務」ってなに?という状態です。
外国人へのオリエンテーションを行う際のポイントは「ハッキリと言い切る」こと、「何故ダメなのか?」を説明することが重要です。
例えば、「深夜にパーティをしたり、騒いではいけません」というオリエンテーションをしたとします。これでは何もハッキリとした基準がないのがわかります。
こういう場合は
「10pm以降、3人以上で集まってパーティをしてはいけません。3人集まると思っている以上に騒音になります。電話をするときはイヤホンを使って静かに話しましょう。なぜならベランダや外で話していると近所の人がうるさいと感じます。通報されて警察がきますので気をつけて下さい。」
という風に「これをやるとこうなる」ということを明確に説明してあげることが重要なんです。
なぜかというと、日本人と比べると将来予測を立てるという習慣がないからです。
ゴミを分別せずに出す→ゴミ回収車が回収しない→ゴミが放置される→ゴミを目的にカラスやネズミ、ゴキブリなどの害獣、害虫が集まる→駆除に費用がかかる
というイメージができないことが問題に繋がりますので、オリエンテーションをするときはそれを説明するとしっかりと理解してくれるようになります。
・写真や図を使って説明する
これは説明をよりわかりやすくするために必要です。
契約書のようにつらつらと文字が並べられていても、そもそも読む気にもならないですし、疲れます。
オリエンテーションをする側も「説明した」という既成事実より、より実のある内容で「伝わる」内容で説明をする必要があります。
4 まとめ
外国人に対するオリエンテーションは以下の3点
「やってはいけないことを」
「写真や図を使って」
「やった後の事をイメージできるように」
を意識して説明したらいいでしょう。
- 深夜のパーティ、騒音苦情
- ゴミ出しの方法
- 駐輪場などの共用施設の利用方法
- 財布を紛失した場合の対応方法
- 引越しの時の注意点
- 年金、税金の支払いについて
- 近所の方とのお付き合い
- 水道管、排水管で気をつけること
- 害虫を発生させないための方法
- 水回り使い方、そうじのやり方
上記は僕の経験上するべき事をリストにしてあります。
他には警視庁と、入国管理庁が発行している在留マニュアルを参照に行う事で、より内容のあるものになると思います。
ぜひお試しください。
終わります。